非西欧写本ギャラリー

羊皮紙工房の所蔵する写本で、西欧以外のものをご紹介します。羊皮紙以外にもパピルスや手漉き紙の写本も掲載しています。

装飾の美しいコーラン(羊皮紙の記述あり)

19世紀オスマン帝国コーラン(抜粋、紙)

19世紀オスマントルコ(手漉き紙)

19世紀にオスマントルコで書かれたコーランの一部です。最初の見開き右ページは、第52章「山」。そこには、「解き広げた羊皮紙に記された経典にかけて」という文章があり、かつてコーランが羊皮紙に書かれていたことがわかります。
冒頭ページには、ペルシア語で所有者の記録が記載されています(1895年)。

プトレマイオス朝エジプトパピルス文書断片

プトレマイオス朝パピルス断片

プトレマイオス朝エジプト、BC4世紀~BC1世紀

プトレマイオス朝時代のパピルス文書断片3点。内容は商業または行政文書であると思われます。
3枚のうち1枚はデモティック両面書き、もう1枚は片面デモティックでもう片面がギリシア語、もう1枚はギリシア語片面書きです。当時の言語使用の様子がわかります。

コプト語羊皮紙文書断片(5世紀頃)

5世紀頃コプト語写本断片

5世紀頃 エジプト?
羊皮紙動物種: ひつじ ※2020年イギリス・ヨーク大学でのタンパク質質量分析(ZooMS)による動物種特定結果

4~5世紀頃、東ローマ帝国下のエジプトでは静寂を求めて修道士たちが砂漠で隠遁生活をしていました。その際に、聖書をはじめ数々の初期キリスト教教父の教えなどについての書物が制作されました。
この文書ではコプト語で「父(神)」、「私」、「生き物(獣)」という単語が読み取れます。

12世紀ビザンツ帝国ギリシア語写本

12世紀ビザンツ聖書

12世紀ビザンツ帝国のギリシア語写本です。内容は、ギリシア教父のひとり、聖ヨハネス・クリュソストモスの説教集。新約聖書ルカによる福音書第7章にある、罪深い女がイエスの足に香油を塗り、律法学者らが憤慨するという逸話に基づいた説教が書かれています。
当時のギリシア語写本は文字の独特な組み合わせがあったり、単語間のスペースがなかったりと、現代の私たちにとってとても読みにくいもの。
スペースが入っているように見えますが、単語間の区切りではなくかなり恣意的です。
例: Thank you very much が、Than kyouver ymu ch となっているような感覚。
また、ビザンツの羊皮紙は表面が研磨されており、文字を滑るように書けるのも特徴です。

旧約聖書エステル記巻物完本(羊皮紙、ヘブライ語)

1600年頃ヘブライ語エステル記

下の画像をスライドすると巻物を開いて見れます。右から左(←)に進みます。

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1600年代ヴェネツィア

古代エジプトのパピルスも含め、古代の書物は巻物中心でした。紀元前1世紀~紀元1世紀の「死海文書」も巻物です。ユダヤ教の世界では、当時からずっと、旧約聖書などは羊皮紙の巻物に書く伝統を守っています。
この写本は旧約聖書「エステル記」巻物完本です。17世紀ヴェネツィアのユダヤ人集落「ゲットー」で実際に使用されていた大変貴重な巻物です。巻物を広げた全長は約3メートル。
スファルディ系(スペインを出自とするユダヤ人)の巻物で、巻物の最後にはカバラ(ユダヤ神秘主義)に基づく祈りが書かれています。
巻物の終わりに近づくにつれて破れなどの補修が目立ちます。破れの縫合に使う糸は、ユダヤ教の規定に従い動物のアキレス腱で作った糸を使っています(一部は植物糸)。
また、補修に使ってある紙にはヘブライ文字で文章が書いてあります。これは、ジュディオ・アラビック(ヘブライ文字で書かれたアラビア語)で、個人的な手紙の結び部分。次のように書かれています。
「モーゼおじさんによろしく。イヒヤ」

古代ペルシアの叙事詩『シャーナーメ』(19世紀手漉き紙)

19世紀シャーナーメ(紙)

『王書』、ペルシア語で『シャーナーメ』と呼ばれる古代ペルシアの叙事詩。詩人フェルドウスィー(934-1025年)作の傑作です。この写本は、19世紀ガージャール朝イランで作られた写本の見開きページです。
内容は、6世紀のササン朝ペルシアの王、ホスロー1世の治世について。金彩を施した大変しなやかな手漉き紙に、優美なナスタアリーク体というペルシア文字の斜体で文章が綴られています。

13世紀キリキア・アルメニア王国福音書

13世紀キリキア・アルメニア王国聖書

アナトリア半島の付け根、現在のトルコ南部には、12~14世紀までアルメニア人国家キリキア・アルメニア王国がありました。そこで写本文化が花開きました。
展示品は13世紀のアルメニア語羊皮紙写本。左ページは4福音書の対応表、右ページはエウセビオスからカルピアヌスへ宛てた手紙です(福音書対応表の説明文)。
左端にいるかわいい動物は、獅子とのことです。

エチオピア聖書(エチオピア、19/20世紀)

19世紀頃エチオピア聖書

内容: 詩編?
羊皮紙動物種: 山羊

巻物から現代の本と同じような製本形態になったのは紀元1世紀頃のローマだといわれています。羊皮紙の束を縫い合わせ、木の板に穴を空けて糸でまとめる。当時のような素朴な方法が、エチオピアに「コプト製本」として受け継がれています。
展示品は、ゲエズ語で書かれたエチオピアの聖書です。あまり知られていませんが、エチオピアも羊皮紙に筆写する文化が近現代まで受け継がれています。

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