動物の違い

羊皮紙は日本語では「羊」と書きますが、ヨーロッパでは羊に限らず、主に山羊、ひつじ、仔牛の3種が使用されています。当ショップでもこの3種を販売しています。以下簡単な説明です。(同じ動物でも個体によりかなりバラつきがありますので、あくまでも一般的な目安です。)動物の選定に迷われる場合は、お気軽にお問い合わせください。

歴史的な使用地域と用途

  • 山羊: 中世イタリアやビザンティンの写本
  • ひつじ: 中世ヨーロッパの一般的な写本や中世・近世の公文書
  • 仔牛: 中世ヨーロッパの高級写本

質感等

以下概要です。詳しくはこのページの一番下を参照。

  • 山羊: 表裏の差が比較的大きく、毛が生えていた側(毛側)は多少毛穴やムラが目立ちます。色は白色や乳白色、うすい褐色などさまざまです。
  • ひつじ: 色は白色~黄色っぽいクリームです。ものにもよりますが、山羊皮や仔牛皮より軽い感じです。肉がついていた側(肉側)は線維の結びつきが比較的粗いため、水分の多いインクで書くとにじむ場合があります。
  • 仔牛: 表裏ともなめらかで書きやすいため、中世ヨーロッパの高級写本でよく使われました。色はほぼムラのない均一な白色~乳白色です。

表面写真

各動物の表裏の表面を撮影したものです。写真は一例です。個体や部位により異なる場合があります。
写真をクリックすると拡大します。(色は照明の色合いですので、実際の色とは異なる場合があります。)

上からの写真(約10cm上から撮影)

毛側

山羊(毛側)
ひつじ(毛側)
仔牛(毛側)

肉側

ひつじ(肉側)
仔牛(肉側)

斜めからの写真(約3cm斜め上から撮影。横からライトを照らして凹凸を強調)

毛側(斜光)

山羊(毛側、斜光)
ひつじ(毛側、斜光)
仔牛(毛側、斜光)

肉側(斜光)

山羊(肉側、斜光)
ひつじ(肉側、斜光)
仔牛(肉側、斜光)

画材使用比較サンプル

描画、筆写のサンプルです。上からコピー用紙、山羊皮、ひつじ皮、仔牛皮を並べ、インク等の乗りを比較しています。使用した画材は、各サンプルの左から次のようになります。左:鉛筆(HB)、中央上:不透明水彩、中央下:不透明水彩(水多量)、右上:顔料インク、右下:染料インク(虫こぶインク)。

筆記具・画材サンプル(毛側)
筆記具・画材サンプル(肉側)

一般的に、毛側は動物の特徴がよく表れていて、耐水性が高いのが特徴で、肉側は白く均一であまり動物的な特徴がなく、線維が粗いため画材の固着がよいのが特徴です。目的や狙う効果により使い分けたり、サンドペーパー等で好みの表面状態に調整して使用します。

毛側の特筆すべき特徴は以下となります。

  • 山羊皮: ややプラスチックのような感じで鉛筆の乗りは薄め。毛穴が多く、薄目に溶いた水彩ははじきながらも毛穴にたまる感じ。
  • ひつじ皮: 少しざらつきありで鉛筆や薄目に溶いた水彩のの乗りがよい。ただし、クレーター状の浅い毛穴がある場合もある。
  • 仔牛皮: 3種類の中で最も滑らかな表面。通常の絵具やインクは若干セル画のように浮き出た感じに見えてきれい。薄めに溶いた絵具はそのままだとはじく。虫コブインクも少しぼやける感じ。乗りをよくするには600番くらいのサンドペーパーをかけるとよい。

肉側の特筆すべき特徴は以下となります。

  • 山羊皮: 毛側とは異なり、プラスチック様感や毛穴はなく、適度なざらつきありで絵具・インクとものりは良好。
  • ひつじ皮: 毛側より線維が粗く柔らかいいため、水分が多くなるとにじむ危険あり。虫コブインクで細い線が出しにくい。
  • 仔牛皮: 3種類の中で最も滑らかな表面。多少血管の痕のへこみがある場合もあるが、使いやすい。
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